吉野秀著『トラブル解決請負人直伝 無敵のケンカ交渉術 実戦で負けない駆け引きのポイント40』発売!

まえがき 負けない交渉テクニックを身につければ、どんなトラブルも解決できる

交渉代理人――契約の不履行、契約の破棄、未払い、詐欺、トンズラ……日々、数多くのトラブルが生まれる。こうしたときに、当人に代わって『交渉』という武器を駆使し、話をまとめるのが交渉代理人の仕事だ。お互いが疲弊する告訴、その一歩手前で、主に話し合いによる和解へと持っていく。
トラブル請負人という表現がピッタリくるだろうか?

本書のテーマの一つが、『いざというとき負けない交渉力』の習得にある。数多くの交渉の本には、『WIN・WIN』が理想と書かれているはずだ。
その通り――。お互いが対等な立場で利益も共有できるような交渉を目指したい。
しかし……現実はそうはいかない。それぞれがお互いの利益を主張し、何とか相手に条件を飲み込ませようとする。そして、いざトラブルが起きると、それぞれが相手を非難して、自分の過失を認めようとしない。
残念ながら、こうしたケースのほうが圧倒的に多いはずである――。
私たちは理想的な交渉術を学ぶ前に、相手の言いなりにならず、自分の主張をきちんと通し、なおかつ、トラブルを引き起こさないような交渉の仕方を学ばなければならないのだ。また、トラブルが起きてしまったとき、相手とどのような手順で交渉するのか知っておかなければならない。
さらに、負けない交渉力を身につけるためには、相手の出方を知っておくことも重要だ。交渉相手の『攻撃パターン』を先読みできれば、それらに対応した防御策が練られるようになる。本書を読み進めるとき、こうした点にも注意してもらうと、交渉のより奥深い世界が実感できるようになると思う。

本書は、通常のビジネス書とは少し異なる。これは私の信条であるが、単なるテクニックだけを習得しようとしても無理がある。それよりも、数多くのケースを想定し、実際の現場でテクニックをどのように駆使するのか――という実践手法を学んだ方が上達は早い。
そこで本書では、『実録』&『ノウハウ解説』という少し変わった構成にしている。つまり、みなさんに交渉の現場を疑似体験してもらおうという試みだ。間接的ではあっても、交渉の場数を踏みながら、交渉の進め方、駆け引きの仕方などを学んでほしい。
そのうえで、交渉に必要なテクニックや注意点を解説していく。この解説部分で、交渉力を磨き上げる要諦をつかんでほしい。交渉時の対話例などもいくつか盛り込んでいる。
最後に、本書に掲載したガチンコ勝負は、いずれも私の実体験に基づいている。交渉代理人である私(本書に出てくる『蠍』が私である)がどう考え、どのような手順で交渉していったのか? 生々しい交渉の現場を披露する。自分が交渉の場面に遭遇しているつもりで読み進めてほしい。
きっと、あなたにも訪れるであろう交渉における様々な難関――こうした難関にぶち当たったとき、本書が少しでもお役に立てれば幸甚だ。負けない交渉力を身につけ、様々なトラブルを迅速に解決していこう。

ケース1 広告代理店課長――ウソを重ねる男が招いた、証拠軽視の落とし穴

軽いリップサービスがトラブルの引き金

ウソをつけないタイプ、ウソを時々つくタイプ、平気でウソをつくタイプ、ほとんどウソしかつかないタイプ、あなたはどのタイプだろう?
ウソはある意味『必要悪』だ。円滑なコミュニケーションのため、必要なときもある。
しかし、罪の度合いが低くてシャレで済まされるウソと、人を傷つけ、貶め、大きな害を与えるウソとの間には、天地ほどの開きがある。当然、ウソが招いたひどい結果には、必ず責任問題が浮上する。ウソをついた本人に、他意があろうとなかろうと……。
今回は、行く先々で都合のよい発言を繰り返し、契約段階になると話をご破算にする……。しかも、あの手この手で逃げ切ろうとする四十歳代の広告マンA氏との交渉実録だ。
フリーランス企画者のBさんがこの男に出会ったのは、猛暑の兆しが見え始めた七月中旬だった。あるパーティーでたまたま隣の席になり、挨拶したのがきっかけ。
他愛もない話をしているうちに、A氏が、あまり知られていない広告代理店C社の課長だとわかった。Bさんは話を打ち切ろうとし、「それでは何か機会がありましたら」というお決まりの言葉を並べる。すると、A氏は胸ポケットをさぐり、七福神や動物を全体にあしらった『○○研究所所長』なる名刺を差し出した。
「個人の名刺は面白くなきゃ駄目ですよね。妻が副所長、飼い猫を顧問にしているんです」
フリーランスのBさんは、パーティーの席ということもあり、
「ユニークですね。今度、詳しく聞かせて下さいよ」
と軽く受け流したのだが……。
この軽いリップサービスが、幾重にも渦巻くトラブルを誘引するとは夢想だにしなかっただろう。広告マンA氏が参加者へ自慢気に見せつけていた黒のキャリーバッグ、Bさんはそれが今でも目に焼き付いているという。この奇妙な物体こそがパンドラの箱だったのだ。

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